レンジでパイナップル

その日暮らしが徒然なるままに書きます

「コンビニ人間」を読んだ話

自分はコンビニに行ってくるとき、よく「コンビニ人間になってくる」と言う。

でも、コンビニ人間を読んだことはなかったから、ちょっとなんか申し訳ないような、恥ずかしいような気持ちがいつもしていた。もしコンビニ人間の読者が近くにいて、俺の話を聞いて、ノリノリで「え!読んだことあるの!?」なんて言われたら、なんて返せばいいのかわからない。「実は読んだことなくてぇ、エアプなんですぅ」なんて言いたくない。

この状態を解消したいというユルフワな気持ちと、本屋の近くのゲーセンに行って音ゲーをしに行ったものの、GWなのもあって人が多すぎて萎えた気持ちが合わさった結果、俺はコンビニ人間を読んだ。

 

 

この作品、ヤバい。

 

基本的にずっと主人公の一人称視点で物語が進行していくんだが、まず主人公の精神構造が人間のそれじゃない。共感能力が著しく欠如している。おそらく、主人公は自閉症スペクトラムとかサイコパスといわれるタイプの人間なんだと思う(発達障害とかまともに知らないから的外れかもしれない)。さらに怖いのがこんなバケモンなのに、視点人物だから、全く共感はできないんだけど思考回路自体は理解できちゃうところ。全く共感はできないんだけど。一体なにを食べたらこんな人間の思考をエミュレートできるんだろうか。さっぱりわからない。

あとは文体が独特。とても淡白でねっとりとした印象を受けた(卵白みたいな味)。作品の雰囲気とマッチしていてとてもよかった。大事な場面でいつも聴覚による情景描写が入るんだが、それがやけにリアルで、普段生きていても意識に介さない音まで拾っていてめちゃくちゃ生々しい。もしかしてなんかの大きな賞獲ってます?って感じるレベル。獲ってるんだけどね。

読後感はかなり気持ち悪い。前述のとおりバケモンの思考回路を強制的に理解させられた上、それをなぞらされるので、自分の考えが侵食されて元々のこの本を読む前までの自分が何を考えていたのかわからなくなる。

総評としては、「あんまり人には薦めたくはないけどこれを読んだ人とは話したい」だ。

 

もう「コンビニ人間になってくる」なんて言えないし、言いたくない。